髪の憧れ 〜後編〜

スミおばあちゃんがそないな髪形をしてた小学生の高学年の頃に
おかっぱがえらい流行ってな。
同級生の子がおかっぱにしてくるねん。

スミおばあちゃんは侍みたいな頭してるやろ?
それが羨ましいて、おかっぱにしとうてなぁ。


それで作之助おじいちゃん「断髪(散髪)してほしい」て言ったんや。

ほんならえらい怒ってなぁ。

「女は髪の毛が命やのに、なんちゅうこと言うかー!」ゆうて
大〜きな木バサミ、裁ちバサミや。

長い大きな木バサミ持ってきて「そんなら坊主にしたる!」ゆうて
血相変えて追わえてきはったんや。
    スミ髪

そんなん坊主にされたらかなんやんか。

そんで、一生懸命逃げた!
まさかホンマにせえへんかったやろうけどな、怖かったんや。
ホンマに坊主にされるか思ってなぁ。

こうなったら言う事聞く以外にあらへん。
スミおばあちゃんのおかっぱにする夢はあきらめたんや。

作之助おじいちゃんはもの凄い可愛がってくれたけど、
怒ったら怖い怖い!
縮み上がるんや。声も大きいしなぁ。

そやけど「髪は女の命」て、スミおばあちゃんが言うのも可笑しいけど、作之助おじいちゃんはホンマに昔の人やねぇ。


                          <髪の憧れ・完>


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髪の憧れ 〜中編・2〜

その当時勤王の志士ゆうてな、勤王の志士分かるか?
近藤勇とか新撰組しってるやろ?

新撰組は徳川家についてるけど、勤王は天皇陛下についてる人や。
それを勤王の志士て言うてたんや。

その勤王の志士の髪がな、頭の上の高いとこで一つにくくってあるんや。
今で言うポニーテールみたいなやつや。
その髪形を作之助おじいちゃんスミおばあちゃんにしはるんや。
「わしがくくったら三日は保つ」ゆうてな、もの凄い固くくくらはるんや。
スミ髪結い&帽子



それでたまに作之助おじいちゃんのお母さん、
スミおばあちゃん
からしたらおばあちゃん。

ちょっとややこしい言い方やけど分かるやろ?

その人がたまに髪の毛結うてくれはるねん。
スミおばあちゃんを自分の前に座らせてな、髪の毛といてくれはるのはええんやけどちょっとでも動いたら怒らはんねん。

そんで、昔タバコ盆いうて四角い木の箱があって、そこにキセルが置いてあるんやな。

キセルて知らんか?
パイプみたいな雁首が付いてて、その雁首のとこにタバコ詰めて吸うんや。
それを吸いながら髪の毛結うてくれはんねん。

丁寧にしてくれはんのはいいねんけどビン付けゆうてな、
油の固まりを(お相撲さんが付けるもの)付けはるんや。

頭テカテカになるやん。
そんでピチーと結うてな、勤王の志士みたいにしはるねん。

そんで「ちょっとくたびれた、一服や」ゆうてタバコ吸いながらな、
そやけどスミおばあちゃんがちょっとでも動いたら怒らはるねん。
そないして結うてくれはったんや。



                      〜髪への憧れ 後編に続く〜

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髪の憧れ 〜中編・1〜

ある日のことや。
作之助おじいちゃんが外へご飯食べに連れていってくれたんや。

するとそこに紳士がおってなぁ。

その時代、洋服着てたらみんな紳士言うてたんや。
その人がな、スミおばあちゃんの髪をなでて
「僕はこんな髪の毛の色が大好きですねん」て言わはったんや。
とにかく、目立つぐらい髪の毛が赤かったいうことやなぁ。
   スミ 葱



スミおばあちゃんが髪の色を気にしてたら、
初江おばあちゃん「ネギ食べたら髪が黒くなる」て言わはってな。

スミおばあちゃんは小さい頃野菜が大嫌いで、とくにネギが嫌いやったんや。
そやけど、髪の毛が黒くなりたいばかりに頑張って食べたんや。

効果?そうやねぇ、ほとんど変わらへんかったように思うわ。



                      〜髪への憧れ 中編・2に続く〜

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髪の憧れ 〜前編〜

         スミ髪 のコピー

昔は家にシュロボウキがあってな。
シュロボウキ知らんか?シュロの木ていうて、ヤシの木みたいな葉っぱがあるんや。
その幹を覆うように茶色い細いヒゲみたいなもんが付いてるんや。
それを取ってホウキこしらえはるねん。
シュロの木から取って作るさかい、シュロボウキて呼んでたんや。

昔のこっちゃさかい、掃除するいうたらホウキで掃くんや。
竹ホウキやら、それは各家にあったんやけどな。
そのシュロボウキが家の横手にぶら下げてあったんや。 


スミおばあちゃんはな、髪の毛が凄く赤かったんや。
それがホンマに嫌やってなぁ。
シュロボウキのとこに行って、髪の毛と比べるんや。
そしたらシュロボウキのほうが黒いんや。毎日そうやって比べてたねぇ。


                    〜髪への憧れ 中編に続く〜

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お弁当の冒険 〜後編〜

  スミ舟店

そうやって毎日お弁当を届けてたもんやから、
作之助おじいちゃんが時々舟店に連れて行ってくれたんや。

舟店ていうのは、大きな舟に屋根付けたお店やねんけど
そこにお菓子がいろいろ売っててな。

作之助おじいちゃんがお駄賃にお菓子を買ってくれるんやけど、
それが嬉しいてなぁ。
     スミお菓子


だいたいあめ玉が多かったねえ。
あとはコンペイ糖も好きやったわ。

スミおばあちゃんの小さい頃は駄菓子屋さんがぎょうさんあったんよ。

                        <お弁当の冒険・完>


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お弁当の冒険 〜中編〜

そうしてようやく会社に着いて、
作之助おじいちゃんにお弁当を届けてたんやで。

お弁当を届けた後は、また同じ道を一人で帰るんやけど、
帰りは何故か気持ちに余裕ができてな。
寄り道しながら帰ったもんや。
  スミお花畑 のコピー

田んぼのそばに蓮花ばっかりが沢山植わってる場所があってなぁ、
ホンマに綺麗やったで。


それとか、土手にタンポポやらつくしが生えてるんや。
まあ、つくしはタンポポが咲き終わった後で時期は違うけどな。
     スミお花畑

タンポポが綿毛になったらフ〜っと吹いて飛ばしたりして、
遊びもって帰ってたのも懐かしい想い出やわ。



                            〜お弁当の冒険 後編に続く〜


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お弁当の冒険

作之助おじいちゃんが働いている会社へ毎日お弁当を届けるのが
スミおばあちゃんの日課やったんや。

朝、会社行く時にお弁当持って行ったらいいのに?
そやなぁ。何でやろなぁ。

初江おばあちゃんが、少しでもできたてを食べさせたかったんやろな。


  スミお弁当



会社へ行くまでの道が、ホンマに景色が良くてなぁ。

右が川で、左が田んぼ。のどかな風景やろ?

ところがな、途中に大きな家があったんや。
その家に大きな犬がいてな。まず、その犬に吠えられるんや。
もの凄い大きな声で吠えるから、それが怖〜て怖〜てな。

つないであるんやけど声が怖いんや。
そやから、そこをパ〜っと走って通って。


ホッとしたのも束の間。
今度はが何頭もつないである土手があるんや。
杭に長〜い紐でつないであるんやけどな、が土手にいてたら怖いやんか。

一頭や二頭じゃあらへんのや。そやから、が土手から降りるの待つんや。
しばらく待ってるとが土手から降りはる。
その間にサ〜っと走って通るんや。


やっと通り抜けて歩いて行くと、今度はお墓があってな。
大きな石碑が沢山あるもんやから、横手の道でも怖くてなぁ。
そやから、そこもタ〜っと走って通り過ぎるんや。


                          〜お弁当の冒険 中編に続く〜


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野施行 〜後編〜

お供えが全部済むと、お家に帰ってきてその人が拝まはるんや。
その人に狐と狸が乗り移って話すんやけど、それぞれ名前が付いててな。

お梅どんとお竹どん言うんや。
その二人が話すわけや。

「私の頭の上におしっこかけはる人がいる。それを辞めてほしい」てな。

昔は、男の人が立ちションをよくしはったんや。
女の人かて野原でおしっこする人がいはったんやで。
そやから、それは辞めて欲しいてお梅どんやお竹どんが頼まはったんや。 
   スミ1



何で野施行をしてたのかって?
それはな、動物達が食べ物に困って畑を荒らしに来んように
「どうぞ食べてください」ゆうて、食べ物を分けてたんや。

昔は動物と共存してたんやで。


今の時代はとにかく人間が中心の世の中やさかい、動物が山から下りてきたら駆除することを考えるやろ?それは悲しいことや。
お互いの事を考え合える関係を築けたらええのになぁ。
これは人間同士の関係にも言えることやと思うわ。

相手のことを思いやる心は、人間が持っている感情の中でも特に大切やと思うしスミおばあちゃんの大好きな「心」や。

                     <野施行・完>


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