作之助おじいちゃん 〜後編〜

それから、作之助おじいちゃんは魚釣りが大好きでなぁ。
沢山竿を持ってはったんやけど、戦火で焼かれてしもうたんや。
そやけど、戦争が終わったらまた釣り竿を手に入れて魚をよく釣ってた。
川では鮒釣り・ドグロ釣り、池ではボラ釣り、海ではハゼ・セイゴ釣り、
イカにカニ、釣り立ての新鮮なものをよく食べさせてくれたよ。
作之助おじいちゃんが会社に行ってる間に、初江おばあちゃんと一緒に魚の餌にする「ミミズ」を取りに行ってたんや。今の子供は、虫もよう触らん子が多いみたいやなぁ。昔はミミズなんて全然平気やったんやで。
とにかく豪快なおじいちゃんやったんやけど、一つだけ苦手なものがあったんや。
それは雷さん。
雷が鳴ると、大事な釣り道具もほったらかして逃げて帰るぐらい怖がってなぁ。
「へそ隠せ!」て本気で言うて怖がったはったんやで。

スミおばあちゃんの知る限り、唯一の弱点やったなぁ。
<作之助おじいちゃん・完>

作之助おじいちゃん 〜中編〜

作之助おじいちゃんも初江おばあちゃんも、ホンマよく可愛がってくれた。
大事に大事に育ててくれたんやで。
それから九年の月日が経って、義弟が産まれた。それが勝のおっちゃんや。
勝は「ネェー、ネェー(姉ちゃん、姉ちゃん)」と言って何処へ行くにも金魚のフンみたいにくっついてきてた。
夏になるとおじいちゃんが西瓜を買ってくれるんや。
今の西瓜はあまり甘くないけど、スミおばあちゃんが子供の頃の西瓜は、真っ赤で甘く、棚落ちしててジャリジャリして美味しかった。畑でもぎたての西瓜やで。
その西瓜を舟で運んできはるんや。
おじいちゃんが「分けて!」と声を掛けると川へドブン!と投げはる。
その西瓜を、おじいちゃんが川を泳いで取りに行くんや。
今では考えられへんやろなぁ。
井戸で冷やした西瓜は凄く美味しかったわ。
作之助おじいちゃん 〜前編〜

作之助おじいちゃんは、スミおばあちゃんのお父さんのことや。
そやけど作之助おじいちゃんの話をするには、スミおばあちゃんの生い立ちを
聞いてもらわなあかんなぁ。
子供は兄が五人、姉が二人。そこへ双子が産まれたんや。
その双子の一人がスミおばあちゃん。
双子のもう一人の赤ちゃんは、作之助おじいちゃんの家に貰われたそうや。
ところがその赤ちゃんが亡くなってしもうた。
一方スミおばあちゃんは夜泣きがひどかったせいで、家を五・六軒たらい回しにされてたんやて。
そんな時に、お寺の和尚さんが
「その子が生きていると思って、この子を育ててくれへんか?」
と言わはったそうや。
スミおばあちゃんが作之助おじいちゃんの子供になったんは、そういういきさつがあったんやなぁ。
スミおばあちゃんの本当のお父さんは、スミおばあちゃんが小さい時に亡くならはった。作之助おじいちゃんに抱っこされて、亡くなったお父さんに会いに行ったんや。棺桶に入ってる本当のお父さん。今でもハッキリ覚えてる。
スミおばあちゃんの本当のお母さんは、七十八歳で亡くなった。
お見舞いに行った時のことや。
お母さんが「堪忍してや、一日とて忘れたことはなかった」と
泣いて謝らはったんや。
この時に、スミおばあちゃんが貰われっ子やと分かったんや。
なんとなく気付いてたんやけど、ハッキリ分かったのはこの日やったんや。
お母さん、ずっと心に引っかかって辛かったやろなぁ。
このことがあって、作之助おじいちゃんと初江おばあちゃん(作之助おじいちゃんのお嫁さん)が本当の娘として大事に育ててくれたありがたみを改めて感じた。
スミおばあちゃんは、いつも口答えばっかりしてたから
「これからは口答えしんとこ」と思ったんよ。
でも、三日坊主やったなぁ。本当の娘になってしまってたということやろな。
| HOME |






